
EF Core 10リリース:ネイティブLeftJoinとベクトル検索で何が変わるか
リレーショナルデータベースを扱う.NET開発者にとってLINQは不可欠なツールですが、これまで外部結合(Left Join)を書くたびに冗長なコードを強いられてきました。EF Core 10では、長年開発者の悩みの種であった文法的な制約が解消され、AIワークロードに対応したデータ駆動型の機能が追加されました。
複雑な結合クエリの簡素化:ネイティブLeftJoinとRightJoin
従来のEF Coreで外部結合を行うには、GroupJoinとSelectMany、DefaultIfEmptyを長くつなげる必要がありました。SQLであれば単純なLEFT JOINの一行で済む処理が、C#コードでは3〜4行の複雑なラムダ式になってしまうのが問題でした。
EF Core 10では、LINQクエリ演算子としてLeftJoinとRightJoinが公式にサポートされます。メソッドが意図したSQL構文に直接変換されるため、クエリの意図が一目で把握でき、可読性が大幅に向上します。
EF Core 10における外部結合の記述例です。
従来の煩雑なボイラープレートコードなしで、データベースエンジンに適した外部結合クエリがきれいに生成されます。
SQL Server 2025のベクトル検索公式サポート
生成AIや検索拡張生成(RAG)を導入するアプリケーションが増加する中、データベース層でのベクトル検索が重要になっています。SQL Server 2025とAzure SQL Databaseがネイティブベクトルデータ型を導入し、EF Core 10はこれをフレームワークレベルで完全にサポートします。
モデルビルダーでHasVectorIndex()メソッドを使ってインデックスを定義し、SqlVector<float>型を活用して埋め込み(Embedding)値を扱うことができます。クエリ時はEF.Functions.VectorDistance()を呼び出して、コサイン類似度やユークリッド距離を直接計算します。別のベクトルデータベースを構築したり、非公式の拡張ライブラリに依存したりすることなく、SQL Server内で類似度検索パイプラインを構築できるようになりました。
開発ツールの変更点とアップグレードの注意点
EF Core 10を導入するには、SDKとランタイム環境の両方を.NET 10以上に合わせる必要があります。下位バージョンの.NETランタイムとは互換性がないため、プロジェクト全体のランタイム移行計画が先行して必要です。
マイグレーションコマンドの実行時にも注意が必要です。複数のターゲットフレームワークを指定したマルチターゲットプロジェクトでは、dotnet-efコマンドを実行する際に--frameworkフラグの指定が必須となります。大量のデータ変更によく使われるExecuteUpdateAsyncについては、従来の複雑な式ツリーの代わりに通常のラムダ式を渡せるよう、シグネチャが改善されました。
どのようなプロジェクトにおすすめか
C#でバックエンドを構築しており、RAGベースの検索機能をSQL Server上で直接実装したいチームにとって、EF Core 10のベクトル検索連携は魅力的な選択肢です。また、複雑なLINQ結合クエリによるメンテナンスコストに悩んでいたプロジェクトも、コード簡素化の恩恵をすぐに享受できるでしょう。
新規に.NET 10プロジェクトを計画中の方や、長期サポート版に合わせてデータ層のリファクタリングを検討されている方は、あらかじめテストプロジェクトを作成して、結合文法やツールの変更点を確認しておく価値があります。
