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Hackenとアントグループがガードレールをリリース — AIエージェントによる勝手な送金を阻止
AIエージェントが自らウォレットを開いてトークンを転送したり、銀行口座を経由して送金したりする姿を想像してみてください。これは想像の話ではなく、すでに現実になりつつある技術です。しかし、誰かが巧妙なプロンプトインジェクション攻撃でエージェントを騙し、ハッカーの口座へ送金させようとした場合、どう防げばよいのでしょうか?
これまではサービスを配布する前にコードの欠陥をあらかじめ洗い出す、静的セキュリティ監査に主に依存していました。しかし、刻一刻と変化するAIエージェントの突発的な行動を隙なく制御するには、行動を実行する直前にリアルタイムでポリシーを検査し、ブロックする新しい方式の実行ガードレールが不可欠です。
プロンプト1行で乗っ取られるエージェント、「5段階攻撃チェーン」を断ち切る
自律的に動作するAIエージェントにオンチェーンウォレットの権限を委ねるサービスが急速に増えています。しかし、この利便性の裏には致命的な脅威が潜んでいます。巧妙に操作されたプロンプトインジェクション攻撃を一度受けるだけで、エージェントが制御権を完全に失い、ハッカーのアドレスへ資産を送金してしまう可能性があるからです。
Web3セキュリティ企業Hackenは、このようにAIエージェントがハッカーに操られ、不正送金を実行するまでの過程を「5段階攻撃チェーン」として精密に分析しました。始まりはハッキング命令が含まれた外部ドキュメントをエージェントが読み取る「注入(Injection)」段階です。その後、エージェントのツール権限を奪う「ハイジャック」、システムを意のままに操る「悪用(Abuse)」、操作された送金明細を作成する「トランザクション生成」段階を経て、最終的にこれをブロックチェーンネットワークに送信する「ブロードキャスト」の順で進行します。
この脅威的な流れを断ち切るためにHackenが提示した解決策が「Transaction Policy Gateway」です。エージェントがブロックチェーンにトランザクションを送信する直前、最終的な入り口で送信要求を横取りして検証する、一種のリアルタイムガードレールです。たとえエージェント内部がハッカーに汚染されていても、最後の送信段階で事前に約束された安全ルールに違反すれば、即座にトランザクションをブロックし、資産流出を根源から封じ込めます。
言うことを聞くプロンプトではなく、リアルタイムの行動パスを検証せよ
「良いエージェントでいてね」といったシステムプロンプトの調整だけでは、AIエージェントの突発的な行動を完璧に防ぐことはできません。エージェントは状況に応じて、常に予期せぬ経路で行動を調整するからです。学界や規制当局が、リアルタイムでエージェントの動きを監視するガードレールを急いで導入している理由はここにあります。
2026年3月に発表された論文『経路上のポリシー(Policies on Paths)』は、こうしたリアルタイム検証の理論的基盤を示しています。研究陣は、エージェントがこれまで辿ってきた行動の「実行経路」をリアルタイムで分析し、ポリシーに違反する確率を計算するエンジンが必要だと指摘しています。事前に設定された静的ルールを超え、エージェントが現在どのような流れの中でタスクを遂行しているのか、リアルタイムの文脈を追跡するという意味です。
金融の現場でも、この原則は急速に取り入れられています。代表的な例として、シンガポール金融管理局(MAS)は2026年7月、リアルタイム・エージェント金融保護ガイドライン「SAFR v1.0」を公式に発表しました。このガイドラインは、金融取引ループ内で発生し得る不正な自動資産転送事故を防ぐため、リアルタイムでエージェントの実行経路を安全に統制するよう強力なセキュリティルールを求めています。
オープンソースとして公開されたリアルタイムの盾 — SingGuard-NSFAとIRSB
開発者がサービスに直接適用できるオープンソースのソリューションも続々と登場しています。代表的なものとして、アントグループが公開した「SingGuard-NSFA」フレームワークがあります。このツールはロボット工学やリアルタイム取引のように、エージェントが行動を起こす直前、危険度をサンドボックス段階で事前に検査することで、システムへの衝撃やAPIエラーを根源的に遮断します。
もう一つ注目すべきプロジェクトは、GitHubのオープンソースガードレール「IRSB」です。IRSBはイーサリアムの新しい標準であるEIP-7702と暗号化された領収書を活用し、エージェントの金融取引権限を安全に統制します。エージェントにウォレットの秘密鍵全体を渡すことなく、決められた限度内でのみ安全に資金を執行できるようにする、オンチェーン防御壁を構築する方式です。
おかげで開発者は、複雑なセキュリティロジックをゼロから直接設計する必要がなくなりました。エージェントの突然の誤動作と外部からのハッキング脅威を同時に防ぐ、堅牢なリアルタイムの盾を簡単にエージェントシステムに組み込めるようになったのです。
静的監査を超えて、リアルタイム行動防御の時代へ
これまでのセキュリティが、コードを配布する前に欠陥がないかあらかじめ洗い出す水準だったとすれば、これからはエージェントが行動を起こす直前に、それをリアルタイムで横取りして検証する「ガードレールの戦い」に変化しています。プロンプトをどんなに精巧に作成しても、エージェントのすべての突発的な行動を完璧に統制することはできないからです。
今後、ビジネスの現場にAIエージェントを導入しようとする開発者やビルダーは、単にプロンプトの調整だけに依存してはいけません。システムの誤動作や金融上の脅威をリアルタイムでブロックしてくれる、物理的な実行制御フレームワークをどう組み合わせるかを先に考える必要があります。実行経路を最後まで追跡・制御するスマートなリアルタイムの盾を備えること、これこそが安全なエージェントサービスを作る最も確実な鍵です。